購買者の中には、倫理的なダイヤモンドを求めてカナダ産のダイヤモンドに興味を持つ人もいます。カナダ産ダイヤモンドの発見と、ダイヤモンドがどのようにカナダのコミュニティを助けているか、またGIAのダイヤモンド オリジン レポートで、どのようにしてあなたのダイヤモンドがカナダ産であるかどうかを知ることができるかについて、見てみましょう。
カナダのダイヤモンドはどのようにして発見されたのか?エシカル(倫理的)ダイヤモンドへの人気殺到カナダ産ダイヤモンドは倫理的か?ダイヤモンドがカナダ産かどうかを知る方法
カナダ産ダイヤモンドの発見と採鉱は、克服不可能と思われる数々の困難を乗り越えた人間の魂のストーリーを語ってくれます。これらのダイヤモンドのほとんどが発見されるノースウェスト準州は、亜寒帯から寒帯の気候に当たります。カナダ北部の雪と氷の中を生き延びることだけでも困難であり、ダイヤモンドを見つけることの困難さは言うまでもありません。
カナダのダイヤモンドはどのようにして発見されたのか?
カナダの探査地質学者であるCharles Fipkeは、デビアスとの熾烈な競争の中、商業的価値のある最初のカナダ産ダイヤモンドの発見に貢献しました。もともと卑金属や金、ダイヤモンドを探すためSuperior Oil(スーペリア オイル)に雇われていましたが、Superior Oilが探査を断念した際、同輩の地質学者のStewart Blussonと共に個人的にダイヤモンドの探査を開始しました。Superior Oilでの仕事を通して、FipkeとBlussonは2つの事に気付いていました。デビアスがノースウェスト準州でカナダ産ダイヤモンドを探していたこと、そしてその探索地が間違っていることでした。
De Beersは指標鉱物を見つけました。指標鉱物とはダイヤモンドが近くにある可能性を示すもので、ガーネット、イルメナイトやクロマイト等、ダイヤモンドと共に地球のマントルで生成される鉱物です。しかしFupkeとBlussonは、何万年も前に氷河がこれらの鉱物をデビアスが探索していた地域に押し流したものだとわかっていました。本当の鉱床は何百マイルも離れている可能性もありました。Fipkeとパートナーは、デビアスのチームより先に、キンバーライト パイプと呼ばれる垂直にのびた岩石層を見つける必要がありました。これらの岩石層は古代火山の残物で、何千年も前のその激しい噴火により、マグマに含まれたダイヤモンドやその他の鉱物が地球深部から表面へと押し上げられたのです。
FipkeとBlussonはほぼ10年にわたり、何百マイルも歩き、空から地形を調べ、また冬の間は研究所でサンプルを分析し、探査を続けました。1989年4月、彼らのヘリコプター用の資金が尽きる前日に、Fipkeは空から凍った、小さな湖を見つけました。彼はその湖をすぐにポイント湖と名付けました。その急斜面と丸い形は、彼が世界の反対側、南アフリカで見たキンバーライト パイプを思い起こさせました。着陸すると、これがダイヤモンドを含有するパイプであることを示す宝石が見つかりました。破産しかけだったFipkeとBlussonはすぐにオーストラリアの採掘複合企業、BHP Billiton(BHPビリトン)に同地探査資金の援助を求めました。湖の下を掘ると、FipkeとBlussonが探していたものが見つかりました。キンバーライト、そしてその後にはダイヤモンドが見つかったのです。カナダ産ダイヤモンドラッシュが始まりました。
エシカル(倫理的)ダイヤモンドへの人気殺到
カナダのダイヤモンド産地に一気に採掘者が集まったため、BHPは、飛行物体を混乱させるフィールドを作り出す電線を、湖の周りに張りめぐらせたほどです。ポイント湖パイプの発見は、それ自体では多くの利益をもたらすものではありませんでしたが、ダイアヴィク鉱山と並んでカナダで最大のダイヤモンド鉱山であるエカティ鉱山の発見を引き起こすこととなりました。
カナダ政府は最初から、環境に対する影響を最小限に抑えながらダイヤモンドを採掘することが、現地の人々の利益になるということを確約するため、細心の注意を払っていました。採掘がはじまる前に、連邦先住民北部事項省、ノースウェスト準州政府及び4部族の先住民グループがこのエカティ プロジェクトを確認しました。採掘業者は、鉱山の寿命が尽きたあとは、地域の植生・生息環境を元の状態に戻すことに同意しなければなりませんでした。
エカティ ダイヤモンド鉱山プロジェクトの探査と開発は、1980年代初めに始まりました。鉱山の建設は1997年に始まり、1998年10月に正式に鉱山がオープンしました。エカティから30km離れたダイアヴィク鉱山は1990年代に発見され、2003年に操業を開始しました。エカティ同様に、オーナーは「完全で安全な閉鉱」を約束し、閉鉱時にはすべての鉱石、通路や建築材料は取り除かれ、また魚の生息地は保護されるか、再現される必要があります。鉱山の正面にある看板にはこう書かれています。「何世紀にもわたり、北の人々は資源を賢明に利用してきました…ダイアヴィクもその伝統を受け継いでいます。」
カナダ産ダイヤモンドは倫理的か?
カナダの環境および労働に関する厳しい法律のため、また特に先住民の人々への尊敬を示すために、カナダ産のダイヤモンドはエシカル(倫理的)ダイヤモンドを求める人達の間で人気を高めています。倫理的なダイヤモンドと言っても人によってさまざまな意見がありますが、一般的な同意としてエシカル ダイヤモンドは紛争やテロの資金源とならないという点があります。環境に配慮した方法で生産され、採掘や加工に携わった人達は公平に対価を受け取ります。
ダイヤモンドは、カナダ経済と地元コミュニティにポジティブな影響を与えています。ドッグリブズとしても知られるティルチョ族は、2003年にティルチョ同意をカナダ政府と結び、ティルチョ族の人々がダイアヴィクとエカティ鉱山、及び指定地域の新しい鉱山すべてから2%のロイヤリティを受け取ることを確認しました。同意には15年にわたり現金で1億1千5百万米ドル(1億5千2百万カナダドル)、そして約3百8十万米ドル(5億カナダドル)のトレーニング資金が含まれていました。ティルチョ族が保持する会社もまた、契約が結ばれると優先されます。
2018年時点で、エカティ鉱山での被雇用者は約1,625人、そのうち44%はノースウェスト準州の住民であり、そのうち57%は先住民の人たちです。2018年までに、ダイアヴィクは北の先住民ビジネスに3百億カナダドル(約2.5兆円)を使い、また鉱山労働者の27%は先住民の人々でした。鉱山操業では、地上またはボートによる必要物資の調達や路面の整備等々、ノースウェスト準州の補助的な雇用を作り出し続けています。ノースウェスト準州の首都イエローナイフには、ダイヤモンドのカッティングと研摩センターが設立されました。
概して、カナダ産ダイヤモンドはカナダ経済を潤す大変重要な輸出品です。2018年時点では、価格と量においてカナダは世界第3位のダイヤモンド生産国です。現在、カナダのダイヤモンド生産は価格にして毎年20億米ドル(約2160億円)を超えるとされています。
ダイヤモンドがカナダ産かどうかを知る方法
ダイヤモンドの4C(カラー、クラリティ、カット、カラット ウエイト)についての知識は、ダイヤモンドの品質と価値を決定する上で重要な役割を果たします。しかし、ダイヤモンドの原産地を知ることも同じように重要です。私たちがダイヤモンドを買うことによって、それらの生産に携わった人々の生活に対して与える影響を理解する助けとなるからです。カナダ産ダイヤモンドはその原産地を謳って販売される数少ないダイヤモンドの1つであり、ほとんどのものは鉱山からマーケットまでの流通をトレース(追跡)することができます。
石の多くはカエデの葉、白熊やなどのカナダのシンボルまたはロゴマークとグレーディングレポート番号が刻まれ、何世代にもわたってはっきりと識別できるようになっています。
ダイヤモンドがカナダ産であるかを知るもう1つの安全な方法としては、GIAダイヤモンド オリジン レポートを入手することです。これは完全で公平な4Cの判定に加え、ダイヤモンドの原産地がはっきりと明記されます。このレポートは一部のカナダ産ダイヤモンドのほか、ボツワナ、レソト、ナミビア、ロシアおよび南アフリカ産の特定のダイヤモンドに発行可能です。
Charles FipkeとStewart Blussonがカナダのダイヤモンドをポイント湖で発見した際、同時に他にも見つけたものがあります。それは、ダイヤモンドについての新しい考え方と、ダイヤモンドを通してコミュニティを変身させる方法です。