合成ダイヤモンドはラボラトリーで作られ、天然ダイヤモンドと実質的に同じ化学組成、結晶構造、物理的特性を持ちます。これらは本物のダイヤモンドであって、「偽物」ではありませんが、天然のダイヤモンドとは異なります。

合成ダイヤモンドは高級ジュエリ―に使用されるか?

使用されます。合成ダイヤモンドは今や、天然ダイヤモンドと同様に高品質で、サイズやカラーも幅広く揃うようになりました。多くの主要な小売業者が無色のラボラトリー グロウン ダイヤモンドを提供しています。デビアス グループの企業であるLightbox(ライトボックス)は無色、ピンク、ブルーのラボ グロウン ダイヤモンドのジュエリーを販売しており、個々のダイヤモンドにはラボで製造されたことを表す印が付けられています。

合成ダイヤモンドの歴史の概要

合成ダイヤモンドは1950年代から産業目的で製造され、テレコミュニケーション、レーザー光学、研磨剤などに使用されてきました。しかし、General Electric(ゼネラル エレクトリック)社の研究者たちが宝石品質の合成ダイヤモンドを初めて製造したのは1970年になってからのことです。

1980年代半ばには、製造業者による宝石品質の合成ダイヤモンド結晶の商業的生産が始まりました。これらのほとんどが小粒で黄色または茶色がかったものでしたが、その後数十年間、現在に至るまで合成ダイヤモンドの品質の改良が続けられてきました。今では、合成ダイヤモンドの外観は高品質の天然ダイヤモンドに匹敵するものとなっています。

General Electric(ゼネラル エレクトリック)社製、ブラウニッシュ イエローの合成ダイヤモンド。

合成ダイヤモンド開発の初期にGeneral Electric(ゼネラル エレクトリック)社によって製造された合成ダイヤモンドは、高級ジュエリーに使用するには小さ過ぎる、ブラウニッシュ イエローの石だった。

ベゼル セットのダイヤモンドを特徴とする指輪。石はラティスワーク(透かし細工)とダイヤモンドのメレーによるヘイローに囲まれている。

多くの宝石店で、消費者はスタイルや指輪のセッティングだけでなく、センター ストーンを、天然であれ合成であれ自分の好みに合わせて選ぶことができる。Brilliant Earth(ブリリアント アース)社製Alvadora(アルバドーラ)リングには、ラボで製造されたダイヤモンドをセットすることができる。提供:Brilliant Earth(ブリリアント アース)

ダイヤモンドのテーパード バゲットをあしらったエメラルド カットのダイヤモンドの指輪

デザイナーのScout Mandolinによるこの指輪は、中央に据えた天然またはラボ グロウンのエメラルド カットのダイヤモンドを特徴としている。提供:Scout Mandolin、scoutmandolin.com

バゲット ダイヤモンドおよびラウンド ブリリアントをあしらったエメラルド カット ダイヤモンドのセンター ストーンが特徴の指輪。

デザイナーのScout MandolinによるAllure(魅惑)リングは、センターにあるエメラルド カットの天然またはラボ グロウンのダイヤモンドが特徴で、バゲット ダイヤモンドとラウンド ブリリアントがアクセントになっている。提供:Scout Mandolin、scoutmandolin.com

ラボで製造されたダイヤモンド:合成ダイヤモンドはどのようにして作られるか

天然のダイヤモンドは地中で数百万年から数十億年前に形成されたものですが、合成ダイヤモンドは最新のラボで数日間または数週間で成長します。二つの主な製造プロセスはHPHTとCVDです。

1. 高圧高温法(HPHT):HPHT法では、地中で天然ダイヤモンドが生成される高圧高温の状態を模倣した機器を使用し、ラボで合成ダイヤモンドが製造されます。その結果、平らな底面に八面体面と六面体面を持つ合成ダイヤモンドの結晶が生成されます。HPHT合成ダイヤモンドの色は、年月を経て技術の進歩とともに進化してきました。GIAのラボに送られてくる合成の石には、オレンジ-イエローから、イエロー、イエロー-オレンジ、無色、ほぼ無色、ブルーまで様々なものがあります。ダイヤモンドに対するHPHTおよび他の成長後の処理では、ダイヤモンドが天然か合成かに関わらず、石をピンク、ブルーやその他の色に変えることができます。

HPHT成長法による合成ダイヤモンド結晶

HPHTダイヤモンド結晶の形は、典型的な天然ダイヤモンド結晶のそれとは明らかに異なる。HPHTで製造されたダイヤモンドは、平らな底面と六面体および八面体の面が組み合わさっているが、天然ダイヤモンドの結晶は八面体となる傾向がある。

8.52カラット(ct)の八面体ダイヤモンド結晶原石

この8.52カラット (ct) の結晶は、アフリカの国、レソトで産出された。天然ダイヤモンドに典型的な八面体の形状をしている。写真撮影:Robert Weldon/GIA。
提供:Fusion Alternatives(フュージョン オルタナティブズ)

2. 化学蒸着法(CVD):このより新しい方法では、真空チャンバー内で炭素を含む気体を分解し、炭素分子を平板状のダイヤモンド種結晶上で結晶化させます。その結果生成される結晶は平板状で、縁が黒鉛で覆われていることがあります。結晶の色はブラウンまたはイエローであることが多く、後からHPHT処理を施してほぼ無色にすることができます。宝石としての研磨用に選別される「無色」のCVDダイヤモンドは、同様の天然ダイヤモンドよりもクラリティ グレードがわずかに高い傾向があり、そのほとんどがVVS2からVS1にグレーディングされます。カラーがD~Nの範囲の天然ダイヤモンドは、そのほとんどがVS2からSI1までのクラリティ グレードとなります。

このCVDダイヤモンドの結晶を囲んでいる炭素素材は、後にカットして除去される。

カットされていないCVDダイヤモンドの結晶は、その独特な形状から簡単に識別できるが、カット済みのCVDダイヤモンドは天然のダイヤモンドとほとんど同じように見える。CVD合成ダイヤモンドには、ラボで成長したことを表すはっきりとした特徴(特有の紫外線蛍光パターン等)を示すものがある。しかし、石の由来の最終的な確認は、高度な機器を備えた宝石ラボラトリーでしかできない。写真:Orasa Weldon/GIA

成長後の処理による合成ダイヤモンドの色の改変

HPHTダイヤモンドは成長した時点でほとんどが無色です。しかし、大量のホウ素を使用して製造された場合、ディープ ブルーになることがあります。ニッケルを添加して成長させると、グリーンになる場合もあります。窒素が含まれれば、魅力的なブライト イエローになります。放射線照射やアニーリングなど、無色からほぼ無色の素材に対して成長後に施した処理によって、ピンクからレッド、またはライト ブルーのダイヤモンドができることがあります。

CVD合成ダイヤモンドは、最初は大半がブラウンですが、ほぼ無色の結晶やイエローがかった色も生成することができます。HPHTの工程は、褐色味を抑えて、DからZのスケールでほぼ無色にあたるダイヤモンドにするなど、CVDダイヤモンドの色を改善することもできます。また、茶色がかったラボ グロウン ダイヤモンドを市場でより売れやすいピンクからレッドの合成ダイヤモンドにするために行う、数段階に分かれた処理工程もあります。

数十年前には、HPHT合成ダイヤモンドのほとんどは成長を終えた時点でイエローまたはブラウンだった。今では、成長したHPHTダイヤモンドの大半が無色である。

数十年前には、HPHT合成ダイヤモンドのほとんどは成長を終えた時点でイエローまたはブラウンだった。今では、成長したHPHTダイヤモンドの大半が無色である。著作権:GIA & Tino Hammid

照射と加熱は一般的な処理工程で、別々に、または併せて行う場合のいずれも、合成ダイヤモンドの色をレッド、ピンクまたはグリーンに改変することができます。ファンシー カラー ダイヤモンドを気に入ってはいても、イエローレッドピンクブルーグリーンのダイヤモンドに手が届かない人々は、それらの代わりに合成のカラー ダイヤモンドや処理済みの天然ダイヤモンドを検討することができるでしょう。

ピンク、レッド、ブルーのラボで製造されたHPHTルース ダイヤモンドとともに並べられた、イエローのHPHTラボ グロウン ダイヤモンドがセットされた一組のジュエリー。

合成ダイヤモンドには様々な色がある。これらのイエローのHPHTラボ グロウン ダイヤモンドのジュエリー セットは、無色の天然ダイヤモンドがアクセントになっている。レッド、ピンク、ブルーのラボ グロウン ルース ダイヤモンドが周囲に散りばめられている。写真:Harold & Erica Van Pelt/GIA。提供:(ジュエリー)Gemesis Corp.(ジェメシス社)

合成ダイヤモンドは天然ダイヤモンドのように見えるか?

ラボで製造されたダイヤモンドは、天然ダイヤモンドとほぼ同じ物理的および光学的特性を持っています。硬度が同等で、同じく様々な色と品質のものが揃っています。天然ダイヤモンドと同じように、合成ダイヤモンドには優れたカットを施すことで上質なファイア、輝き、きらめきを持たせることができますが、凡庸なカットに終わることもあります。カット前の素材の形状や、カッターの技術によります。ラボで製造されたピンクとブルーのダイヤモンドは、天然のピンクやブルーのダイヤモンドとはわずかに異なる色合いになることがあります。色相のわずかな違いに加え、ラボで製造されたピンクやブルーのダイヤモンドは彩度がより高く、二次的な色がより少ない傾向があります。

この5個のCVD合成ダイヤモンドは、肉眼では、同品質の天然ダイヤモンドと同じように見える。

この5個のCVD合成ダイヤモンドは、肉眼では、同品質の天然ダイヤモンドと同じように見える。写真:Robert Weldon/GIA

合成ダイヤモンドを見分ける方法

合成ダイヤモンドの鑑別は困難を極める場合があります。合成ダイヤモンドと天然ダイヤモンドは、光学的および物理的特性がほぼ同じだからです。高度な検査機器を備えた宝石ラボだけが、ダイヤモンドが天然か合成かのはっきりとした判断を下すことができます。

金属インクルージョンは、HPHT合成ダイヤモンドであることを示す場合がある。

金属インクルージョンは、HPHT合成ダイヤモンドであることを示す場合がある。金属は、ダイヤモンドの成長を促進するため、ダイヤモンドの種結晶や黒鉛とともに高温高圧炉に入れる触媒として頻繁に使用される。上の写真は、拡大下で確認された二つの金属インクルージョンを示す。写真:Sally Eaton-Magaña、Troy Ardon

消費者を守り、混乱を未然に防ぐため、GIAラボラトリーは天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドに別々のレポートを発行します。GIA ラボラトリー グロウン ダイヤモンドレポートは、ゴールドの代わりにグレーのボーダー色を使用するなどGIAダイヤモンド グレーディング レポートとは外観が異なりますが、それぞれの種類のダイヤモンドのグレーディングに使用される基準は同じです。それぞれのラボラトリー グロウン ダイヤモンド レポートには、ダイヤモンド品質の4Cの完全な評価と、合成ダイヤモンドのガードルにレーザー刻印されたレポート番号が記載されています。合成ダイヤモンドには、グレーディング レポート番号に加え、「laboratory-grown(ラボ製造)」の文言が刻印されます。

GIA ラボラトリー グロウン ダイヤモンド グレーディング レポート

GIA ラボラトリー グロウン ダイヤモンド グレーディング レポート。

天然ダイヤモンド用のGIAダイヤモンド グレーディング レポート

天然ダイヤモンド用のGIAダイヤモンド グレーディング レポート。

合成ダイヤモンドのジュエリーの購入は得策でしょうか?

合成ダイヤモンドは天然ダイヤモンドと同等のきらめきと耐久性を持ち、より手ごろな価格で購入できます。ですが、その由来は大きく異なります。天然ダイヤモンドが数百万年から数十億年前に地球深部で形成されたのに対し、合成ダイヤモンドはラボラトリーでHPHT工程またはCVD工程を経て数日間から数週間で生成されます。天然、処理済み、または合成のいずれのダイヤモンドを購入するかは、最終的には個人の選択によります。

このHPHT法で製造した無色のエメラルド カット ダイヤモンド(10.02ct)は、GIAが検査を行った中で最大のファセット カットされた合成ダイヤモンドの1つ。

合成ダイヤモンドは、ほんの数十年前の小さな、産業品質のイエローの結晶から長い道のりを経てきた。このHPHT法で製造した無色のエメラルド カット ダイヤモンド(10.02ct)は、GIAが検査を行った中で最大のファセット カットされた合成ダイヤモンドの1つ。写真:Johnny Leung/GIA

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