本物のダイヤモンドとは?
プロのジェモロジストがダイヤモンドを「本物のダイヤモンド」と呼んだり、あるいはどんな素材でも「本物」という言葉を使って表したりすることは、あまり聞かないでしょう。 賢い消費者という印象を与えたいならば、違う表現を使う必要があります。
何十年にも渡って、ダイヤモンドは婚約指輪の宝石として選択されてきました。 しかし合成ダイヤモンドやダイヤモンド類似石が出現してきて、本物のダイヤモンドについて尋ねるのは当然とも言えます。 「本物の」は宝石学の用語ではありませんが、 顧客にとってこれは重要な言葉です。
ダイヤモンドはダイヤモンド
宝石専門家の目から見ると、その特徴となっている化学組成と結晶構造があれば、ダイヤモンドはダイヤモンドです。 ダイヤモンドはほぼ1種類の元素、すなわち炭素で構成されています。 ダイヤモンドは、炭素原子をすべての方向に基本的に同じように結合させる、高温高圧の条件下で形成されます。 別の鉱物であるグラファイトも、炭素のみを含有していますが、その形成過程と結晶構造は、非常に異なっています。 その違いの結果、グラファイトは文字が書けるほど柔らかいのに対し、ダイヤモンドは非常に硬く、ダイヤモンドに傷をつけることができるものはダイヤモンドしかありません。
このダイヤモンドの定義は、地殻から生成されるダイヤモンドと、ラボで製造されるもののどちらにも当てはまります。 けれどもダイヤモンドに見せかけている他の素材には当てはまりません。
ですから、ジュエラーに本物のダイヤモンドを求めた場合、自然界で生成されたものとラボで製造されたもののどちらでも求めていることになります。どちらの素材もダイヤモンドの条件を備えているからです。 信頼のできるジュエラーならば「本物」という言葉の使用を避け、米国連邦取引委員会(FTC)のガイドラインに従って、天然ダイヤモンド、合成ダイヤモンド、ダイヤモンド類似石(または模造石)の違いを明確に識別します。
合成ダイヤモンドとダイヤモンド類似石については、別の記事で紹介しています。 ここでは天然ダイヤモンドについて少し掘り下げ、地中深くから地表へ現れ愛する人の指におさまる婚約指輪となるまでのおどろくような旅を見て行きましょう。
天然ダイヤモンドに関する簡単な説明
天然ダイヤモンドは自然の不思議のひとつです。 何十億年ほどの時を経て、地球のマントルの深い場所に生成し、火山の噴火によって地上に運ばれます。 キンバーライトとランプロアイトという二つの種類のマグマが、ダイヤモンドの原石を運んでくることがあります。 このマグマはすばやく凝固して、ダイヤモンドを含むキンバーライトパイプやランプロアイトパイプとなります。
世界中のほとんどのダイヤモンドはキンバーライトの中に見つかりますが、一時期世界で主導的なダイヤモンド生産地であった有名なオーストラリアのアーガイル鉱山は、ランプロアイト鉱床です。 大手企業は大規模な露天掘りで、埋まっている宝を掘ってダイヤモンドを回収します。 掘り進み、通常は円錐形のパイプが下に行くにつれ細くなっていくと、採掘会社は手法を地下採鉱に変更して最後に残っているダイヤモンドを探します。
ダイヤモンドの中には、浸食作用の力によって結晶が母岩から外れて、徐々に水に流れていき、河川や時には海で見つかることもあります。 ダイヤモンドがこのように発見された場合、これは泥、砂、そして砂利を振り分けるプロセスを経て掘りだす、漂砂採鉱と呼ばれます。 川の土砂は多くの場合、初歩的な技術を使う小規模な炭鉱夫によって掘り出されますが、上質のダイヤモンドを探す場合では、ナミビア沖の砂を大きなボートで探します。
記録にある歴史の大半において、希少性の非常に高いダイヤモンドは上流階級の人々のみが手に入れることのできるものとなっていました。 実際1730年まで、南インドのゴルコンダ地域と太平洋のボルネオ島だけが、世界でダイヤモンドを生産する地域として知られていました。 その後、1720年代ごろにブラジルでダイヤモンドが発見され、それから「ダイヤモンドラッシュ」が始まりました。 すぐに、ブラジルは世界一のダイヤモンド生産地としてインドを追い越し、この地位を1800年代半ばまで保っていました。 1869年代後半に南アフリカでダイヤモンドを含む大きなキンバーライトパイプが発見され、採鉱は産業スケールで始められ、より多くの顧客の需要に答えるよう、供給を増加していきました。 ダイヤモンドは現在、ロシア、ボツワナ、カナダ、南アフリカとオーストラリアを含む、世界中のいくつもの国で採鉱されています。 ダイヤモンドがどこから来たか、についての詳細はこちら。
ダイヤモンドの原石を、研磨された宝石に変える。
回収されたダイヤモンドは荒々しい誕生や地上に出るまでのたいへんな旅を乗り越えてきました。 ダイヤモンド採鉱会社は、ダイヤモンドの原石をひとつ見つけるために、何万ものパーツを母岩から取り除きます。 それから作業員はダイヤモンドの原石を、サイズ、形、クラリティ、色に基づいて分類します。 採鉱会社は、原石からダイヤモンドをカットして仕上げることもあり、またディーラーや宝飾品メーカーにそのまま販売することもあります。
ダイヤモンドの原石は多くの場合、インド、イスラエル、ニューヨーク、アントワープ、中国、タイなどにあるカッティングセンターに送られます。 高い技能を備えたダイヤモンドのカッターは、多くの場合レーザーなどの最新の技術を使用し、原石を高度に研磨されたファセットダイヤモンドに変えます。 仕上がったダイヤモンドのほとんどは、グレーディングラボに送られ、色、クラリティ、カット、カラット重量の、GIAの4C基準に基づいて品質を判定します。 ひとつひとつのダイヤモンドは固有の品質を持っていて、1つとして同じものはありません。
ダイヤモンド処理
製造業者は、その宝石をより魅力的にして市場性を上げるため、ダイヤモンドの色やクラリティを改変しようとすることがあります。 色の範囲を変更するために使用する方法は、油性マジックでガードルファセットに色を塗るという雑なものから、光学的な薄いフィルムでファセットを覆う、ダイヤモンドに放射線をあてる、高圧高熱のアニーリングに晒すといった高度な技術まであります。 最も一般的なクラリティのエンハンスメントはフラクチャー充填です。 これら全てはダイヤモンドの外観を改善するかもしれませんが、販売者はFTCによって法的にダイヤモンドが処理されていることを開示する必要があります。
永遠で復元力と耐久性があるため、多くの人々が愛の誓いのシンボルとして「本物」のダイヤモンドを選ぶことは不思議ではありません。婚約指輪に天然ダイヤモンドを考慮している場合は、GIAダイヤモンドグレーディングレポートをお求めになることをお忘れなく。 このレポートは、そのダイヤモンドが天然で、販売者が説明する品質と同じである証明となり、自信を持ってダイヤモンドを購入するために必要な重要情報を提供します。 もしラボで製造されたダイヤモンドを選択する場合は、GIA合成ダイヤモンドグレーディングレポートが、その素材が実際にダイヤモンドであり、模造品ではないという保証になります。