カラー ダイヤモンドには特別な魅力がありますが、その中でも希少な天然のグリーン ダイヤモンドには最も好奇心をかき立てられるでしょう。

ダイヤモンドのグリーンの色は、放射線を浴びた結果として生じます。放射線源は自然に存在する場合と、ラボラトリーで発生するものがあります。自然の照射は、ダイヤモンドが地表近くの岩石に含まれる放射性ウランにさらされた結果生じます。人工照射は、線形加速器(リニアックとも呼ばれる)、ガンマ線、原子炉のいずれかを使用するラボで行われます。

天然のカラーのダイヤモンドとカラー処理を施したダイヤモンドは、外観上は同じ色ですが、市場での価値には非常に大きな差があります。天然のカラーで色相がグリーンのダイヤモンドは、いずれも大変希少で、価値が高くなります。そのため、グリーン ダイヤモンドは、色が天然か人工的なものに起因しているかを判断する「色の起源」鑑別レポートの依頼のためにGIAに送られてくることがよくあります。地中に見られる放射線は、ラボラトリーでダイヤモンドの処理に使用される放射線と種類が似ているため、天然の色か、処理による色かを区別することは宝石学のラボでも必ずできるとは限りません。

提供:American Siba Corp. (アメリカン シバ 社、カット済みの石)、Cora Diamond Corp. (コーラ ダイヤモンド社、原石結晶)

4.24カラット(ct)の 天然カラーのファンシー グリーン ダイヤモンド。一揃いのイエローからグリーンのダイヤモンド原石に囲まれている。提供:American Siba Corp. (アメリカン シバ 社、カット済みの石)、Cora Diamond Corp. (コーラ ダイヤモンド社、原石結晶)

グリーン ダイヤモンドの色の起源を判断するのは困難です。GIAでは研究者が鑑別技術の研究を続けており、決定的な検査方法はないものの、グリーン ダイヤモンドの色が天然なのか処理によるものかの判断基準としてジェモロジストが使用する証拠があります。

天然のグリーン ダイヤモンドの結晶には、表面に放射線のシミであるグリーンまたは褐色の点が見られることがよくあります。これをラボラトリーで複製するのは不可能です。こうした放射線のシミは表面にあるため、ファセット加工の過程で除去されることが多く、カットを施して宝石として仕上がった後には、ライト グリーンやグリーンの結晶はその色のほとんど、またはすべてを失ってしまいます。時折、グリーンの色をとどめるために、ガードル部分に沿ってシミが残されることがあります。

キューレット(石の底部にある平らな面)部分ではっきりと見えるグリーンのゾーンは処理が施されたことの明らかな証拠ですが、グリーン ダイヤモンドは天然、処理済みともにグリーンの色が均等なこともまばらなこともあります。より古い形の放射、サイクロトロン照射では「アンブレラ効果」が生じることがありました。これはカラー ゾーニングのパターンで、ダイヤモンドの底部に様々な色の傘の形をした部分が生まれます。

天然の-マーキス-グリーン-ダイヤモンド

このマーキス シェイプの天然グリーン ダイヤモンドは、グリーン系のダイヤモンドに典型的な色を持つ。グリーン ダイヤモンドは宝石として仕上がると、非常に稀に顕著なグリーンの地色を持つことがある。

最も有名な天然カラーのグリーン ダイヤモンドは、Dresden Green(ドレスデン グリーン)であると広く考えられています。約41カラットの重さを持つこの石は、知られている限り最大の天然グリーン ダイヤモンドです。

ドレスデン グリーンには逸話となっている歴史があります。インドのゴルコンダ地域のダイヤモンド鉱山で産出されたと思われ、1726年頃にロンドンに持ち込まれました。
その年にザクセン選帝侯でポーランド王のフリードリヒ・アウグスト1世が購入し、その後1741年にフリードリヒ・アウグスト2世に売却されました。
1年後に、特別に発注して作られた金羊毛騎士団の徽章にセットされました(同騎士団は、「高貴な血筋の者の徳と信仰を奨励し、これに報いる」ために1429年に創設されました)。

ドレスデン-グリーン-ダイヤモンド

1768年製のプラハの宝石商ディースバッハによる帽子飾りにセットされたドレスデン グリーン ダイヤモンド。

最初の徽章は4年後に壊れたため、ダイヤモンドは新しい徽章にセットされました。1768年にこの徽章が廃止され、ドレスデン グリーンを留めていた部分は帽子飾りを作るのに使用されました。この宝石は現存し、200年以上もグリーン ヴォールト(ドイツ、ドレスデンの博物館)に収蔵されています。戦時中のみ、安全に保管するため要塞に移されました。1988年には、GIAのジェモロジストがこの有名なグリーン ダイヤモンドを検査する機会を得ました。

人工的な照射実験が始まる前からの長い歴史に加え、ドレスデン グリーンはその色によっても有名です。天然の放射線によって生じたグリーンの色は、天然のグリーン ダイヤモンドで一般的に見られるような表面のみではなく、石全体にわたっているためです。このグリーンの地色を生む天然の放射線源と地質学的条件についての学説が立てられていますが、このようなダイヤモンドは非常に希少なため、放射線源は未だに特定されていません。

ドレスデン グリーンの分析により、GIAの科学者たちには、グリーン ダイヤモンドの色が天然か、処理によるものかを判断するために開発された基準をテストする機会が与えられました。ドレスデン グリーンは、ダイヤモンドへの照射実験が始まった1904年よりもかなり前に発見されているという点で、理想的な試料です。しかし検査の結果、グリーン ダイヤモンドの色の原因を調べる決定的な検査方法を見つけるには更なる研究が必要だという結論が出されました。

研究者たちは現在、現時点で知られている天然のカラーとカラー処理を施されたグリーン ダイヤモンドにつき、その確認方法を向上させるべく、両者の宝石学的特性の文書化に専念しています。長年にわたるこの宝石鑑別の取り組みは、ゆっくりと進展しています。

グリーン ダイヤモンドにご興味がおありですか?これらの希少な宝石や、他のカラー ダイヤモンドの色の起源について詳しく学びましょう。