数千年にわたり誰もが欲しがる6月の誕生石は、今でもモダンファッションの女王として最上位に君臨しています。 エレガントでスタイリッシュ、そして有機質である真珠は、多種多様の色、様々な形で提供されています。 私たちの真珠入門書が美しい一品を選ぶ際に役立つでしょう。

この記事の内容は次のとおりです。
真珠とは?
アコヤ、タヒチ、南洋、淡水の養殖真珠
真珠の歴史と伝承
真珠はどこからきたのか
注目すべき真珠の品質
真珠の手入れとクリーニング

「Black Star(ブラックスター)」、ファセットカットされたタヒチ真珠

ファセットカットされた真珠は、従来の養殖真珠ではない。 この斬新な美しさは表面に施されたファセットが200以上にもなることがある。 写真:Robert Weldon/GIA 提供:Victor Tuzlukov


6月の誕生石:真珠とは?

真珠は有機体の宝石で、海水や淡水に住む母貝の中で育ちます。 これらの軟体動物は殻が1枚のもの(一枚貝)と2枚のもの(二枚貝)があります。 母貝は無脊椎動物、つまり脊柱や脊椎がありません。

ジェモロジストは6月の誕生石である真珠を2つのカテゴリーに分けています。

  • 天然真珠:人の介入なしで形成する真珠。 母貝に異物が入ると、母貝が炭酸カルシウムとコンキオリン(真珠層と呼ばれる)の混合物を分泌します。 保護殻のように、真珠層が異物を覆います。 何千年も装飾品として使用されているものの、今日、天然真珠は非常に稀少で真珠販売全体のごく一部を構成するのみです。
エドワード朝様式の、明るめと暗めの真珠が交互についた天然真珠ネックレス

天然真珠がエドワード朝時代のこのネックレスの重要なポイント。 写真:Robert Weldon/GIA

  • 養殖真珠:こちらは人間が介入する産物です。 技術者は外套膜の切片を単独で(淡水養殖真珠に一般的)、あるいは真珠母貝のシェルビーズを一緒に(海水の場合はすべてこのケース)を、母貝に埋め込みます。 母貝は天然真珠のように、異物を真珠層で覆います。 養殖真珠は、真珠養殖場で育てられます。養殖場は海水または淡水で運用され、そこでは母貝が綺麗にされて、また捕食動物から保護され、最終的に採取されます。 養殖真珠は真珠販売の大部分を占めています。


養殖真珠:アコヤ真珠、タヒチ真珠、南洋真珠、淡水真珠

科学者は、世界の水域には10万以上の異なる種の母貝が存在すると推定しています。 しかし、6月の誕生石を産出する種は数十種に限られており、その約半数しか養殖真珠を産出するために使用されていません。 養殖真珠は真珠を産出する母貝の種によって分類されます。

3つのアコヤ養殖真珠

アコヤ養殖真珠は非の打ち所がない気品がある。 写真:Robert Weldon/GIA

アコヤ養殖真珠:海水に住むアコヤガイ(Pinctada fucata)の海水産貝は、ホワイトやクリームカラーの養殖真珠を産出します。一般的には直径2〜11mmで、平均的なものは6〜8mmです。
アコヤ養殖真珠は完璧な円形であることが多く、素晴らしい光沢(真珠表面から、またその近辺から反射する光)があります。 アコヤ養殖真珠の多くは日本または中国で商業生産されています。

タヒチ養殖真珠の様々なカラーを見せるネックレス

この格別に素晴らしいネックレスには、様々な色とりどりのタヒチ養殖真珠が並んでおり、13〜19mmの27点の養殖真珠が特徴。 写真:Robert Weldon/GIA。 提供:個人コレクターおよびMona Lee Nesseth、Custom Estate Jewels(カスタムエステートジュエルズ)

タヒチ養殖真珠:エクゾチックで、発光しそうなくらいのカラーが有名で、これらはフランス領ポリネシアの島々原産のクロチョウガイ(Pinctada margaritifera)の海水産貝から採れる産物です。 母貝は、取引ではオーベルジン(ナス色、濃いグレーがかった紫)、ピスタチオ(黄色がかったグリーンからグリーンがかった黄色)、ピーコック(ピンクから紫のオーバートーンを持つ濃い緑がかったグレーからブルーグレー)などの名前で表現されることがあるボディカラーの真珠を産出します。 タヒチ養殖真珠は一般的には直径9〜14mmで、最も多く見られるものは9〜11mmです。

ブルーサファイアでアクセントがついたセミラウンド型の南洋養殖真珠ネックレス

ブルーサファイアでアクセントがついたこのセミラウンド型の南洋養殖真珠ネックレスは、驚くほど素晴らしいメッセージ性を出している。 写真:Robert Weldon/GIA。 提供:Atelier Marisa(アトリエ・マリサ)

南洋養殖真珠:シロチョウガイ(Pinctada maxima)は海水養殖真珠母貝の中でも最も大きく、直径8〜20mm、平均して13mmの真珠を産出します。 シロチョウガイ(Pinctada maxima)には2種類の母貝があります。シルバー リップとゴールド リップです。 シルバーリップはほとんどがホワイトからシルバーの真珠を産生し、時にピンク、ブルー、またはグリーンのオーバートーンを持つものがあります。 ゴールドリップはほとんどがイエローからオレンジイエローの真珠を産出し、取引では「ゴールド」や「ゴールデン」と呼ばれます。

様々なカラーの淡水養殖真珠

真珠は、これらの中国産の淡水養殖真珠のように、様々な色がある。 写真:Robert Weldon/GIA

淡水養殖真珠:淡水産貝のヒレイケチョウガイ(Hyriopsis cumingii)または交配種から採れ、主に中国の湖、池、川で産出されます。 様々な形とサイズ(最大約20mm)、またホワイト、オレンジ、ラベンダー、紫などの天然の色があります。 またさまざまな色に染色もされます。

ジェモロジストは、その光沢からこの6月の誕生石にほれ込んでいます。光沢とは、真珠の表面から放たれる光の反射、また凸面鏡に跳ね返る光のような同心円状の真珠層のレイヤーから届く光です。 真珠の質感もまた魅力的です。天然真珠も養殖真珠も、歯に当ててこすると若干ざらざらした感覚があります。これに反して模造真珠は滑らかです。 また一方、ジェモロジストはX線を使用して真珠の内部構造を検査し、これにより確実に天然と養殖の真珠を分けることができます。


6月の誕生石:真珠の歴史と伝承

真珠の起源は先人達を魅了しました。 中東の古代の人々は真珠は天からこぼれてきた涙と信じていました。 中国人は6月の誕生石が龍の脳から生まれたと想像していました。 クリストファー・コロンブスやその時代の人々は、母貝は真珠を露から形作ると考えていました。

昔から真珠は、純粋さ、謙虚さ、純潔さを連想させます。 だから6月の誕生石がもつ意味は「愛らしい純真さ」と言われるのでしょう。それゆえに、真珠は伝統的に結婚のお祝いに贈られていました。

6月の誕生石は有益な財産をもたらすとも考えられていました。
古代のサンスクリット語の文献、Atharvaveda(アタルヴァヴェーダ)には、真珠は長寿と財産を授けると謳われていました。 アジアでは、真珠は消化不良や出血を和らげると信じられていました。 1820年代のアラブの医者は、真珠の粉で視力、神経性の震えが改善し、鬱を和らげると主張していました。

最も有名な天然真珠には、50.56カラット(ct)のLa Peregrina(ラ・ペレグリーナ)があります。 鳩の卵ほどのサイズがあり、この真珠は1500年代にパナマ湾で発見されました。 これは珍重されるヨーロッパの王族財産となりました。 1969年、リチャード・バートンが最終的にエリザベス・テイラーに贈り、2011年にはChristie’s New York(クリスティーズ・ニューヨーク)にて1180万ドル(約9億3千万円)で落札されました。

50.56ctの天然真珠ペンダントがついた2連のネックレス。56個の海水天然真珠、4個の養殖真珠、ルビー、ダイヤモンドのアクセント付き

エリザベス・テイラーの50.56ctのLa Peregrina(ラ・ペレグリーナ)真珠は、文字通りの王族の宝石で、フィリップ2世(1582〜1598年)からカルロス4世(1778〜1808年)まで8代にわたりスペイン国王が所有していた。 Cartier(カルティエ)がその真珠を、56個の海水天然真珠、4個の養殖真珠、ルビー、ダイヤモンドがあしらわれたこの2連のネックレスにつけられたペンダントの一部にセットした。 提供:Christie’s(クリスティーズ)


6月の誕生石:真珠はどこからきたのか?

6月の誕生石を見つけたいならば、手つかずの水域に向かって出帆しなければなりません。 真珠を含有する母貝は汚染された水域ではうまく育たないため、真珠養殖場は通常は文明化から遠いところ、そして大概は息を飲むほど美しい環境に位置しています。

海水真珠は世界中の多くの地域で成長します。 アコヤ真珠養殖場は主に日本や中国、特に広東省や広西自治区の南部沿岸にあります。 南洋養殖真珠はオーストラリア北部の沿岸からインドネシア、東南アジアの南部沿岸で養殖され、フィリピンにも大規模な作業場があります。 ギャンビア諸島とトゥアモトゥ諸島は、いずれもフランス領ポリネシアにあり、鮮やかなタヒチ黒真珠が養殖されている地域です。

日本の英虞湾にあるアコヤ真珠養殖場

日本の英虞湾はアコヤ真珠養殖場として最も重要な場所のひとつ。 写真: Valerie Power/GIA

淡水養殖真珠は主に中国の、上海から半径400マイル(644km)以内で育てられます。

フランス領ポリネシアにある真珠養殖場

フランス領ポリネシアにある真珠養殖場の水は、まるで楽園を見ているよう。 写真:Amanda Luke/GIA

天然真珠はアラビア湾(ペルシア湾)で少なく見積もっても5000年にわたり見つかっており一方紅海では潜水士が紀元前300年から紅海で6月の誕生石である真珠を採取しています。 マンナールの海峡では、紀元前2000年から真珠をもたらしています。 16世紀に始まり、スペインによる植民地支配の間、大量の真珠が中央アメリカのメキシコ沖の水域から採取されていました。現在のベネズエラにあたります。 現在ではこの水域から見つかる真珠は少量しかありません。


6月の誕生石:注目すべき真珠の品質

真珠の購入で品質と価格を比較する際は、ジェモロジストが6月の誕生石の品質を評価して特徴づけるために使用する7つの要因を覚えておいてください。 GIAの真珠の7つの評価要因TMとして知られており、次の内容です。

  1. サイズ:真珠の寸法はミリメートルで表し、0.5mm単位で四捨五入します。 すべての条件が同じであれば、大きな真珠ほど価値が高くなります。
  2. 形状:GIAでは真珠を7つの形に分類します。
    • ラウンド
    • ニア・ラウンド(ほぼラウンドの形、若干のバリエーションがある)
    • オーバル
    • ボタン(対称的な、円形で平らな形)
    • ドロップ(対称的な、ラウンドまたはペアシェイプ)
    • セミバロック(それほど対称性はない、非円形)
    • バロック(対称性はまったくなく、目に見えて不規則形)
  3. 色:真珠の色には3つの構成要素があります:
    • ボディカラー – 真珠の主要で総合的な色
    • オーバートーン – 真珠の表面の広い部分に層状に現れる半透明の色
    • オリエント – ボディカラーを覆う1色以上の半透明の色、または表面のイリデッセンス
  4. 光沢:真珠の表面から反射される光の強さと鮮明さ。 光沢の5つのカテゴリー:エクセレント、ベリーグッド、グッド、フェア、プア。
  5. 表面:真珠に現れるブレミッシュあるいは凸凹の性質と数。 天然の産物のため、ブレミッシュがまったくない真珠はほとんどありません。 真珠の表面は、クリーン(無傷)、ライトリー・スポッテド(わずかな傷)、モデレートリー・スポッテド(中程度の傷)、へビリー・スポッテド(かなりの傷)と表現されます。
  6. 真珠層の品質:真珠層の厚さと規則性。 有核養殖真珠の真珠層の品質が容認されるには、ビーズの痕跡が目視で見られないことと、白濁した外観が見られないことです。
  7. マッチング(連相):この要素は真珠のストランドや2つ以上の真珠を使ったジュエリーアイテムを評価する際に適用されます。 優れたマッチングには、真珠の外観がすべて均一で、穴が中央にあることが求められます。

また、養殖真珠は外観を改善するために通常は処理されることを覚えておくべきです。 加熱、染色、照射、またはコーティングによって色を強調されていることもあります。 その他の処理:

  • 漂白 – 均一の外観を作るために漂白する
  • ティンティング – 赤の染色を使用してアコヤ養殖真珠をピンクにする(ピンキングとも呼ばれる)
  • バフィング – キャニスター(または類似の装置)で真珠を回転洗浄し、表面の欠点を取り除く
ダイヤモンドとタヒチ養殖真珠を集めたイヤリング

このダイヤモンドとタヒチ養殖真珠のイヤリングのように、真珠のジュエリーを清掃する際は特に注意して扱わなければならない。 写真:Robert Weldon/GIA 提供:Mastoloni、New York(マストローニ、ニューヨーク)


6月の誕生石:真珠の手入れとクリーニング

真珠はモース硬度スケールの2.5〜3.0のため、比較的柔らかい宝石で特別な手入れが必要です。 他の宝石や金属ジュエリーとは分けて保管し、傷がつかないように防ぎましょう。 真珠をプラスチックの袋に入れないでください。プラスチックは化学物質を発して真珠の表面にダメージを与える可能性があります。 香水、ヘアケア製品、化粧品などは必ず真珠のジュエリーを身に付けるに使用しましょう。 6月の誕生石の手入れする最善の方法は、柔らかい湿った布を使い、理想的には着用後毎回手入れすることです。

真珠のジュエリーのお手入れ方法のヒントを読んで、水から生まれた宝物を美しく保ちましょう。

6月は祝いの月です。結婚式や記念日、卒業式や誕生日もあります。 6月の誕生石で祝うよりも良い方法はあるでしょうか。 クラシックなアコヤ養殖真珠のストランドから、シングルファセットのタヒチ養殖真珠まで、あらゆる好みと予算に合うスタイルがあります。