9月の誕生石、サファイアは数千年もの間大切にされてきた宝石です。 サファイアはその美しいブルーの色により、最も人気の高いカラーストーンの一つです。 また青以外にも様々な色のものもあります。 ここで素晴らしい石を選ぶ方法をご紹介します。
この記事の内容は次のとおりです。
サファイアの宝石学的特性
サファイアの歴史と伝承
サファイアの産地
サファイアの購入時に注目すべき品質
サファイアのお手入れとクリーニング
サファイアの宝石学的特性
9月の誕生石サファイアには、よく知られたブルーのほかにも様々な色があります。 こうした色は「ファンシーサファイア」と呼ばれ、バイオレット、グリーン、イエロー、オレンジ、ピンク、パープル、ブラック、ブラウンなどや、中間の色合いがあります。 また無色のものもあります。 それはこの石が、アルミニウムと酸素から成る鉱物種コランダムに属するためです。 コランダムは純粋な状態では無色です。 しかし、無色のコランダムはまれにしか見られません。 ほとんどのコランダムには他の微量元素が含まれます。鉄、チタン、マグネシウム、バナジウム、クロムなどで、これらがアルミニウムの代わりにコランダムの構造内に存在しています。 ブルーサファイアやファンシーサファイアの着色には、不純物の間の相互作用と、場合により石の結晶構造の不完全さも関係しています。こうした不純物は光を吸収し、本来無色の鉱物に色が生じます。
サファイアのブルーには鉄およびチタンの不純物間の相互作用が必要で、ピンクサファイアのピンクや、同じ鉱物種コランダムであるルビーの赤ではクロムが重要になります。 (コランダムの中で赤だけがサファイアでなく、ルビーと呼ばれます。)
コランダムでは、どの色でもアステリズムと呼ばれる現象、すなわち星彩効果が見られます。 この現象は通常、コランダムに直射日光または単一の強い光を当てて観察した時に、カボションカットの石の湾曲した表面で、六条の星の模様として現れます。 アステリズムは、特定の方向を向くルチルまたはヘマタイトの、多数の小さな針状のインクルージョンの存在により引き起こされます。
もう一つの興味深い変種はカラーチェンジサファイアです。
魅力的なこれらの石は、異なる照明の下で違う色を見せます。ほとんどの場合、日光または蛍光灯のもとではバイオレットがかったブルーを示し、白熱灯のもとでは赤みがかったパープルに変化します。 こうした石の存在が、素晴らしい9月の誕生石サファイアの選択肢に特別な一面を加えています。
サファイアの歴史と伝承
9月の誕生石サファイアは、古くから誠意、真実、忠節、高潔を象徴するものとされてきました。 何世紀もの間、サファイアは王族や聖職者の式服の装飾品として使用されてきました。 古代ギリシャやローマのエリートの間では、ブルーサファイアがその所有者を危害や嫉妬から守ってくれると信じられていました。 中世の聖職者は、天を象徴するという理由でサファイアを身に着けていました。
9月の誕生石サファイアはまた、癒しの力を持つことでも知られていました。 中世のヨーロッパ人は、サファイアが伝染病による腫物や目の病気を治すと信じていました。 また解毒剤であるとも考えられていたのです。
有名なサファイアには、ミャンマー(ビルマ)で採掘され、長方形のステップカットが施された重さ62.02ctのロックフェラーサファイアなどがあります。 資本家で慈善家のジョン・D・ロックフェラー・ジュニア(1874-1960)が 1934年にインドのマハラジャから入手したこの石には、長年の間に再カットと留め直しが行われました。 このサファイアは最初にブローチにセットされていましたが、のちにブリリアントカットを施した2つの三角形のダイヤモンドのサイドストーンをあしらった指輪に使用されました。
もう一つの有名な石としてスターリーナイトサファイアがあります。 同じくミャンマー産のスターリーナイトサファイアは111.96ctのカボションカットで、華麗な6条のスターはアステリズムの良い例です。
サファイアは9月の誕生石であると同時に、結婚5周年および45周年(日本ではブルーサファイアは23周年とされることが多い)を記念する宝石でもあります。
サファイアの産地
カシミール、ミャンマー、スリランカは、サファイアの主要な産地としての歴史があります。 サファイアは、かなりの量がオーストラリア、タイ、カンボジア、マダガスカル、米国(モンタナ)、そしてアジアやアフリカの他の国々でも見つかっています。
カシミールでは、1881年頃にヒマラヤ山脈の高地で、滑らかな「コーンフラワー」ブルーの結晶を含む大きなポケット型鉱床が土砂崩れで露出した時に、サファイアが見つかりました。 さらに南で見事なサファイアが出始めるにつれ、カシミールのマハラジャとその軍隊はこの新しい産出地を掌握しました。
1882年から1887年にかけて、大粒の美しい結晶が数千個も回収されました。 カシミールのサファイアが世界で最も望ましい宝石であるとの評判は、この6年間という短いシーズンに基づいています。 その後生産は散発的となりましたが、オークションハウスは時々質の高いカシミールサファイアを販売しています。
ミャンマーのモゴック地域は、サファイアの産地として有名なもう一つの場所です。 ジャングルに覆われた丘を山々が縁取り、ドラマチックな風景を織りなしています。 サファイアは一般的にルビー鉱床に沿って産出しますが、ルビーに比べるとずっと少量です。 多くの人が今も「ビルマ」産と呼ぶサファイアは豊かで強烈な青の色合いを持ち、そのために特に価値が高くなっています。 ミャンマーはまた、ジェダイトジェード、スピネル、ジルコン、アメシスト、ペリドットや、その他の上質な宝石素材の有名な産地でもあります。
スリランカは、2,000年以上にわたって上質のサファイアを産出しています。 この「インド洋の宝石箱」の漂砂の砂利から採れる青い石は、卓越した輝きと彩度を示します。 さらに、この島で採れる乳白色の「ギューダ」サファイアは、熱処理を施して豊かな青い色にすることができます。
スリランカはパパラチャ(シンハラ語で「蓮の色」を意味する語に由来)サファイアの数少ない産地の一つです。 薄色から中程度のピンクがかったオレンジからオレンジピンク色のサファイアは、「サーモン」、「サンセット」、「熟したグアバ」などといった詩的表現で表されます。パパラチャはたいへん人気が高く、カラットあたりの価値も非常に高くなっています。
宝石が豊富なこの島は、ルビー、スピネル、ガーネット、トルマリン、トパーズ、その他多くの宝石の産地でもあります。
タイはサファイアの産地であると同時に、カッティングと処理の重要な中心地でもあります。 泥だらけの道が交差するうっそうとしたジャングルの中で、チャンタブリ州の鉱山労働者たちはサファイアを採掘します。 ミャンマーとカンボジアのサファイアは、チャンタブリでカッティングと処理が行われ、主要な宝石の中心地であるバンコクに出荷されることが多くあります。
注目すべきサファイアの品質
美しいサファイアを選ぶためのヒントはこちらです。
- 色:ブルーでもファンシーカラーでも、ほとんどのサファイアの価値は色相、色調、彩度の組み合わせによります。 色相とは、宝石の基本的な色が与える第一印象のことです。 色調とは、色の明るさまたは暗さです。 彩度は色の強さ、強度のことです。
- サファイアは色によって、それぞれに品質が異なります。 ですが一般的に、色味が強く、魅力のないカラーゾーンが少ないほど、石の価値が高まります。 最も価値が高いとされるブルーサファイアは、ミディアムからミディアムダークの色調で、ベルベットのように滑らかなブルーからすみれ色がかったブルーです。 色調が暗くなったり輝きを失ったりすることなく、可能な限り高い彩度でなければなりません。 これらの資質を持ったブルーサファイアに、カラットあたりの最高価格が付けられます。
- すべての色のサファイアにおいてゾーニングはよくあることですが、特に正面を上に向けたときに顕著に見える場合は、これがサファイアの価値を下げます。 購入を決定する前に、ゾーニングの有無や程度を見極めるために、石をすべての角度から観察することが重要です。
- サファイアの価値を決める他の要因は、クラリティ、カット、プロポーション、希少性および市場での需要です。
- カット:サファイアの仕上げで最も一般的なものは、ブリリアントカットのクラウンとステップカットのパビリオンを伴うクッションと楕円形です。 トリリアント(三角形)、エメラルド、ペア、マーキスなどの形にカットされたブルーサファイアもあります。
サファイアのアステリズムは、石をカボションカットした場合にのみ現れます。 仕上がった石の魅力は、スターの向きとカボションの対称性、プロポーション、そして仕上げにかかっています。
対照的な輪郭を持ち、石を上向きにおいてスターが中央に位置するカボションを探します。 カボションのドームは、スターにくっきりと焦点を当てるため、石の幅の約3分の2ほどの高さが必要になります。 高すぎると、石が傾いたとき、その現象の優雅な動きが失なわれてしまいます。 また、高さが余分にあると石をマウントしにくくなってしまいます。
- クラリティ:サファイアには、概してインクル―ジョンが含まれています。 一般的にインクル―ジョンは石の価値を下げ、また石の耐久性が損なわれる場合、価格も大幅に低下する場合があります。 非常に高いクラリティを持つサファイアはまれであり、非常に価値があります。
- カラット重量:サファイアは、数ポイントから数百カラットのものまで、あらゆる大きさのものがあります。 大きなブルーサファイアは、大きなルビーよりも入手しやすいです。 しかし、ほとんどの商業用品質のブルーサファイアは、5カラット未満です。 大粒のパパラチャサファイアやカラーチェンジサファイアはたいへん希少です。
- 処理:サファイアは、色や外観の他の要素を改善するために何らかの処理をほどこすことが多いため、購入の際には注意してください。 加熱は、特にブルーサファイアにおいては一般的な処理の一つです。 結果は安定していて耐久性があり、熱処理が行われたブルーサファイアの効果は通常永久的に維持されます。 そのため、この処理はカラーストーン市場では一般的に受け入れられています。
- 格子拡散も色を改善させるもう一つの一般的な処理です。 これはサファイアを、チタンまたはベリリウムのような着色剤とともにるつぼに詰め、ほぼ融点まで熱する方法です。 これにより成分が石に入り、色を変化させます。 例えば、ベリリウムの拡散により、ピンクサファイアはオレンジまたはピンクがかったオレンジ(パパラチャ)に変化します。 この処理は永久的であると考えられていますが、場合により(チタン拡散処理がほどこされたブルーサファイアなど)着色が浅いために、石がかけたり、再度カッティングが必要となったりした場合、色がとれてしまう可能性があります。
- 安定性の低い、あまり一般的でない処理としては、表面に到達するフラクチャーをオイル、エポキシ、樹脂または高鉛含有ガラスで充填する方法があります。
場合によっては、着色された充填剤を使用することがあります。 - 充填剤による処理を施したサファイアには特別な注意が必要です。 充填剤は、種々の化学薬品や高熱との接触により損傷を受けることがあります。 レモン汁のような比較的低刺激の物質でさえも、高鉛含有ガラスの変質を引き起こす可能性があります。
- 購入前にサファイアに処理が施されているかどうかを必ず尋ねるようにしてください。 GIAカラーストーン鑑別レポートで、石が天然か合成か、また、いずれかの処理が施されているかどうかがわかります。
サファイアのお手入れとクリーニング
サファイアは比較的硬く、モーススケールでは9です。 優れた靭性を持ち、衝撃で割れる性質を示す「劈開」がありません。 このため、日常的に使用する指輪やジュエリーにセットするのに最適な選択肢となります。
コランダムは通常の着用において安定性があり、熱、光、および一般的な化学薬品の作用に対して耐性があります。 ホウ酸粉末は、未処理の石であっても表面を腐食します。 フラクチャー充填、キャビティ充填、および染色を施した石は、レモン汁のような弱い酸でも損傷することがあります。
サファイアのクリーニングには、温かい石鹸水を使用するのがどの場合においても安全です。 超音波洗浄器およびスチームクリーナーは、未処理、加熱処理、格子拡散処理された石に対しては、通常安全です。 フラクチャー充填、キャビティー充填または染色された素材のクリーニングは、湿らせた布だけで行います。
サファイアについてすべて知ることができたので、美しい石を購入したいとお思いではないでしょうか。 GIAのサファイアの購入ガイドが良い石を選ぶのに役立ちます。