ルビーは7月の誕生石で、最も人気の高い宝石の一つです。 古代インドでは「宝石の王様」と呼ばれ、今日、カラーストーンでも最高のカラットあたりの価格がつけられることがあります。 この美しい宝石について知っておくべきことをご紹介します。
この記事の内容は次のとおりです。
ルビーの宝石学的特性
ルビーの歴史と伝承
ルビーの産地
ルビーの購入時に注目すべき品質
ルビーの処理、お手入れとクリーニング
7月の誕生石:ルビーの宝石学的特性
7月の誕生石ルビーは鉱物コランダムの変種で、微量元素クロムを含み、これがルビーの色を生み出しています。 クロムの含有量が多くなるほど、赤い色が濃くなります。 クロムはまた、赤い色の濃さをさらに強める赤色の蛍光を引き起こすこともあります。 蛍光は、紫外線(日光など)、X線、レーザーなどの高エネルギー源にさらされたときに一部の宝石素材が一時的に発する可視光です。
一部のルビーは、石灰岩中の鉱物に熱と圧力が加わったとき、大理石中に形成されます。 こうしたルビーは、クロムの含有量が多く、鉄が少ないという、鮮やかな赤には理想的な組み合わせのために非常に珍重されます。 また傾向として、蛍光性も高くなります。
溶岩が冷却、凝固した際に形成された玄武岩の中で見つかるルビーもあります。 一般的に、玄武岩中のルビーには大理石中のルビーよりも鉄がかなり多く含まれ、色が濃くなります。 高い鉄含有量はまた蛍光をも隠し、赤色の特別な輝きを弱めています。
また別のルビーは、角閃石を含む片麻岩(粗粒の変成岩)中にも形成されます。
これらのルビーは色が優れています。鉄の含有量は大理石中のルビーより多く、玄武岩中のものよりは少なくなっています。
ジェモロジストは7月の誕生石であるルビーを大変好みます。1960年、最初のレーザーの製造に合成ルビーが用いられたことがその理由です。 また彼らは、クロムを微量元素の「ロックスター」とみなしています。
消費者には、その鮮やかな赤い色と、モース硬度スケールでダイヤモンドに次ぐ硬度(9)から愛されています。 このように、ルビーは指輪や他のジュエリーとして日常的に着用するに十分な、優れた耐久性のある石です。
それぞれ合計8.16カラットのルビー、1.78カラットのマーキスダイヤモンド、1.69カラットのラウンドダイヤモンドを使用したこのイヤリングを見れば、私たちがこの宝石に魅せられる理由がわかる。 提供:Omi Privé
7月の誕生石:ルビーの歴史と伝承
ルビーのように貴重な宝石は、当然さまざまになぞらえられています。 ルビーは血の色に似ているため、古代の人々は止血効果があると信じていました。 この7月の誕生石はまた、炎症性の病気を治し、怒りを鎮めるとも考えられていました。 ビルマの戦士は、戦いで自分たちを無敵にしてくれるものと信じていました。 中世ヨーロッパ人は、ルビーが健康、知恵、富、恋愛の成功を与えてくれると考えました。
7月の誕生石であることに加え、ルビーは伝統的に15回目や40回目の結婚記念日の贈り物にもなっています。
ハリー・ウィンストンのルビーの靴は、7月の誕生石が素晴らしいセッティングで使われている有名な例です。 映画「オズの魔法使い」の50周年を記念し、Harry Winston(ハリー・ウィンストン)は推定合計1,350カラットの4,600個のルビーを用いて一足の赤い靴を作成しました。 1989年に作成された時には、300万ドルの値がつきました。
ハリー・ウィンストンの有名なルビーの靴は、1997年12月にGIAで展示された。 推定合計1,350カラットの重さの4,600個のルビーがこの靴の中で輝いている。さらに50カラットのダイヤモンドがユニークな作品にアクセントを添えている。 提供: Harry Winston(ハリー・ウィンストン)
7月の誕生石: ルビーの産地
7月の誕生石、ルビーを求める私たちの探索はミャンマー(旧名ビルマ)から始まります。 最高品質のルビーはその一部が、5世紀以上にもわたってミャンマーのモゴック地域で産出しています。これらは光を分散するインクルージョンと輝く赤の蛍光で和らいだ、鮮やかな赤の美しい石です。 この地域には、風雨にさらされた大理石と古い仏教寺院があります。
モゴックに近い男子修道院の金色の尖塔が、山腹に沿って色鮮やかにそびえる。 写真:Robert C. Kammerling/GIA
母岩とより合わさったルビーの結晶は、モゴックで採れた宝石の完成品の美しさに匹敵する。
写真:Robert Weldon/GIA 提供:Bill Larsen および Jeanne Larson
ベトナムもまた、大理石から採れるルビーの重要な産地です。 雨林が繁る山々が広大な水田の上にそびえるLuc Yen(ルク イェン)地域は、赤から紫がかった赤のルビーを産出します。 今日は、運命を好転させる宝石を見つけたいとの思いから、高い技能を持つ鉱山労働者たちが地面を掘り起こしています。
ルビーを産出するLuc Yen(ルク イェン)地域の山のふもとには小さな村がある。 写真:Vincent Pardieu/GIA
Luc Yen(ルク イェン)やベトナムの他の地域で産出したルビーが、この4つの指輪とネックレスに使用されている。 写真:Shane McClure/GIA
4.04カラット(ct)のルビーは、商業用ルビーおよび高級ルビーの重要な産地、モザンビークで採鉱されたもの。 写真:Robert Weldon/GIA 提供:Evan Caplan、GemFields(ジェムフィールズ)
モザンビークは7月の誕生石ルビーが採れる、角閃石関連の新しい重要な産地です。 アフリカに位置するこの国には、モンテプエズに多産な鉱山があります。 ここで産出するルビーは、モゴックの有名な宝石に匹敵します。
タイとカンボジアの国境に沿った玄武岩関連のルビー鉱床は、1900年代後半長年にわたり、市場で流通するルビーの主要な産地でした。 他の重要な産地にはスリランカ、タンザニア、マダガスカルがあります。
マダガスカル産ルビーは鮮やかで、わずかにオレンジがかった赤色をしている。 写真:Robert Weldon/GIA 提供:アイダホ州サンバレー、Allerton Cushman & Co.
7月の誕生石:ルビーの購入時に注目すべき品質
- 色:色は7月の誕生石ルビーの品質で最も重要な要因です。 最高級のルビーは、混じりけのない鮮やかな赤色からわずかに紫がかった赤色をしています。 オレンジや紫の色味が増すと、そのルビーの評価は下がります。 最高品質のルビーには、濃すぎない、鮮やかな彩度があります。
- クラリティ:インクルージョンのないルビーは稀少なため、取引に関わる人々はルビーに少なくともある程度のインクルージョンがあることを想定しています。 インクルージョンが石の価値に及ぼす影響は、どの程度目立つかによります。 明らかに目に見えるインクルージョンや、透明性や輝きを軽減するようなインクルージョンは、ルビーの価値を下げることがあります。
- カット:ルビーの結晶形状により、特定のカットに対する適合性が決定されます。 ルビーの結晶の形状は一般的に平板状の六角形ですが、一部の産地からの結晶には細長いものもあります。
- カラット重量:さまざまなサイズのルビーが入手可能ですが、1カラットを超える高品質のルビーは希少で、当然非常に高価になります。
この5.00ctの楕円形のルビーは、18Kローズゴールドでセットされ、合計2.53ctのヘイローおよびバンド部分のラウンドダイヤモンドに囲まれて、一層光り輝く。 提供:Omi Privé
7月の誕生石:ルビーの処理、お手入れとクリーニング
温かい石鹸水を使用するのが、7月の誕生石ルビーの安全なクリーニング方法です。 超音波クリーナーおよびスチームクリーナーは、通常、未処理の石や熱処理、格子拡散処理が施された石については安全です。 フラクチャー充填、キャビティー充填や染色が施された石のクリーニングは、湿らせた布だけで行います。
ルビーは多くの場合、熱処理が施され、紫色の色味を取り除いて混じりけのない赤色にしてあります。 このプロセスにより、宝石の色調を薄く不透明にする「シルク」(微細な針状インクルージョン)を除去することもできます。 色を向上させるための熱処理は、通常の着用やお手入れに対しても効果が安定しているため、取引においても受け入れられています。
格子拡散は、熱と化学薬品を使用し、特定の元素を宝石内に拡散させて色を変化させる技術です。 この処理も一般的に、通常の着用とお手入れに対して安定しています。
フラクチャー充填は、表面に達する亀裂に物質を注入して見えにくくすることにより、宝石の外観を向上させるものです。 一般的に充填に使用されるのはガラス、ガラス様の物質、ポリマー、樹脂、オイルなどです。
ルビーのフラクチャーの充填には鉛の含有量が多いガラスがよく使用されるため、見た目のクラリティが向上します。 市場にはこのようなガラスを充填したルビーが多く流通しており、場合によってはフラクチャーの多い宝石をガラスがつないでいるということもあります。 ガラスは、様々な化学薬品との接触により損傷することがあります。 濃縮レモン汁のように比較的低刺激性の物質でさえも、充填剤の腐食を起こす可能性があります。
他の処理としては、着色オイルによる染色や、エポキシ樹脂による表面の小さな亀裂の充填があります。 しかし、これらは恒久的なものではありません。 こうした処理には特別なケアが必要です。
購入前にルビーに処理が施されているかどうかを必ず尋ねるようにしてください。 米国連邦取引委員会では、宝石の知覚価値に影響する処理の開示を義務付けています。 GIA鑑別レポートは、石が天然か合成か、また、いずれかの処理が施されているかどうかを識別するうえで重要です。
アールデコ時代のジュエリーに使用された幾何学的な形状を彷彿とさせる、このダイヤモンドとルビーのブレスレットは、合計20.56カラットのタンザニア産カボションカットルビーとともに輝いている。 写真:Kevin Schumacher/GIA
7月の誕生石ルビーを現在お持ちかどうかに関わらず、美しいルビーを所有することは希少で貴重なことです。