11月の誕生石にはふたつの美しい選択肢があります:トパーズとシトリンです。トパーズには虹のように様々な色があります。そしてシトリンには魅力的な黄色やオレンジの色相があります。これらふたつの宝石は無数の選択肢を与えてくれます。どの宝石を選ぶかを決めるのは難しいことでしょう。私たちがお手伝いをいたします。この記事の内容は次のとおりです。

トパーズの宝石学的特性
トパーズの歴史と伝承
トパーズの産地
トパーズの購入時に注目すべき品質
トパーズの処理、お手入れとクリーニング
シトリンの宝石学的特性
シトリンの歴史と伝承
シトリンの産地
シトリンの購入時に注目すべき品質
シトリンの処理、お手入れとクリーニング

11月の誕生石:トパーズの宝石学的特性

11月の誕生石であるトパーズには、実際非常に幅広い色の範囲があり、茶色に加えて青、緑、黄、橙、赤、ピンク、紫の様々な色調と彩度のものがあります。無色のトパーズは豊富にあり、処理して青色にされることがよくあります。

こちらの画像は、11月の誕生石であるトパーズの数ある色のうちの一部。左から右へ:9.21 ctの無色エメラルドカット、15.01 ctのライトブルーエメラルドカット、18.41 ctのパープリッシュピンクエメラルドカット、12.54 ctのオレンジレッドエメラルドカット。

こちらの画像は、11月の誕生石であるトパーズの数ある色のうちの一部。左から右へ:ナイジェリア産の9.21 ctの無色エメラルドカット、ブラジル産の15.01 ctのライトブルーエメラルドカット、パキスタン産の18.41 ctのパープリッシュピンクエメラルドカット、ブラジル産の12.54 ctのオレンジレッドエメラルドカット。写真:Robert Weldon/GIA

トパーズの色のついたものは、たいてい単に色相名、即ちブルートパーズやピンクトパーズなどとして鑑別されますが、特別な商品名もいくつかあります。インペリアルトパーズとは、基本的には赤みがかった橙色からオレンジ・レッドの中程度のものを指しますが、一部のディーラー、特にブラジルのディーラーは、黄色、ピンク、赤のトパーズにも同じ用語を使っています。インペリアルトパーズの赤色系の多色性の色は(多色性とは、見る方向により異なった色を示す性質)、ペアシェイプやオーバルシェイプなどにカットされた石の端に現れることがしばしばありますが、本来の地色は黄色からオレンジです。トパーズの色では、赤が最も需要の高い(そして手に入りにくい)色の一つです。シェリートパーズは、シェリーワインにちなんで命名されましたが、これはイエローイッシュ・ブラウンないしブラウニッシュ・イエローからオレンジです。この色の範囲の石は、しばしばプレシャストパーズと呼ばれ、クォーツの中で同様の色であってもあまり高価でないシトリンやスモーキークォーツと区別されます。トパーズはモース硬度スケールの8です。あまり靭性は高くないため、大きな衝撃によって割れる可能性があり、極度の圧力や激しい温度変化によって破損することもあり得ます。この11月の誕生石トパーズは、石を保護するベゼルセッティングなどの石留め法あるいは、ペンダントやピンのような激しい磨耗にさらされない作品に使用するのが最も適しています。

ダイヤモンドとプラチナのバタフライブローチにセットされたピンクトパーズ。

ダイヤモンドとプラチナのバタフライブローチにセットされたピンクトパーズの素晴らしい外観。写真撮影:Robert Weldon/GIA、提供:Richard Krementz Gemstones(Richard Krementz 宝石)

宝石の世界において最大の結晶を有するもののひとつであることから、ジェモロジストはトパーズが大好きです。最大のものはカラットではなくキロ単位のサイズとなっています。また、トパーズをファセットカットする際に高度な研磨が可能で、触ると少し滑る感じがするところもジェモロジストが大変好んでいる点です。

11月の誕生石:トパーズの歴史と伝承

トパーズは、多くの利点があると長い間考えられてきました。古代ギリシャ人は、トパーズは自分達に力を与えてくれると信じていました。14世紀から17世紀の間、ヨーロッパ人はトパーズが魔法を阻止し、怒りを払いのけてくれるものと考えていました。11月の誕生石トパーズはまた、治癒力を持つと信じられていました。12世紀に女子修道院長聖ヒルデガルトはトパーズを3日間ワインに入れ、「弱視」を治療するために患者の目に湿らせたトパーズをこすりつけることを勧めました。インペリアルトパーズは気品と特別な価値を持っています。この名前はロシアの皇族が、ロシアのウラル山脈で採掘されたこの宝石の最高級の色のものを、皇族に独占的に使用することを主張していたことからつけられたと一般的に考えられています。この他の説明として、主にブラジルでの通説では、ブラジルの皇帝ペドロ2世がブラジルで最も生産量の高いトパーズ鉱山に最も近い町、オウロプレトに1881年に訪れた際に、赤みがかったトパーズを寄贈されたことからその名がつけられたとも言われています。名称の発祥に関わらず、この美しい宝石が王にふさわしいと考えられていたことに疑いはないでしょう。

オーバルカットのインペリアルトパーズ

気品と特別な価値を持つ宝石をお探しならば、インペリアルトパーズがぴったりだろう。写真:Robert Weldon/GIA

ブルートパーズは結婚4周年記念の宝石であり、インペリアルトパーズは結婚23周年記念の宝石です(日本ではトパーズが16周年記念の宝石とされます)。

38.56 ctのブルートパーズ

この38.56 ctのトパーズは芸術的な彫刻によりその色が強調されている。写真: Lydia Dyer. 提供: John Dyer & Co.

11月の誕生石: トパーズの産地

ブラジルの州であるミナスジェライスは高品質なトパーズの最も重要な産地の一つです。イエロー〜オレンジ、レッド、ピンク、バイオレットそしてオレンジまたはパープルが混ざったレッドなどの色がここで産出されています。近隣の街オウロプレトは、まさにそうした地です。ユネスコの世界遺産であるこの街では、壮大な植民地時代の教会が街の地平線に彩りを与え、趣のある石畳の通りが街を交差しています。

ネックレスにセットされた24.13 ctのファンシーカットトパーズと44.11、71.21、66.66ctの裸石。

ブラジル・ミナスジェライス州のオウロプレト地域で産出されるトパーズは、このネックレスにセットされた24.13 ctのファンシーカットトパーズと44.11、71.21、66.66ctの裸石のように美しい色相が特徴。写真:GIA および Harold & Erica Van Pelt 提供: Amsterdam Sauer Co.

パキスタン北西部はピンクトパーズの産出で知られています。小さな街カトラン近隣にあるグンダオ丘では、1972年から採鉱が続いています。カトランで産出されたピンクトパーズの色合いで最も珍重されているのは、紫がかった色合いのもので、一部の宝石取引ではシクラメンピンクと呼ばれています。しかしグンダオ丘でも上質のピンクトパーズが見つかることはごく稀です。

パキスタン北西部の緑の絨毯に覆われた谷にあるGhundao Hill(グンダオ丘)は、11月の誕生石トパーズの産地として知られている。

グンダオ丘はとても美しい場所にあり、谷は麓から緑の絨毯に覆われている。そびえ立つヒンドゥ・クシュ山脈が遠くに見える。写真:Dr. Edward J. Gübelin/GIA

その他のトパーズの産地として、アフリカ南部西岸にあるナミビアや、宝石の豊かな産地マダガスカル島があります。現在、トパーズは歴史的なロシアの地方やアフリカ、中国、インド、ミャンマー、スリランカ、ベトナム、アメリカ、メキシコなどの国々でも発見されています。

11月の誕生石:トパーズの購入時に注目すべき品質

色:ブルートパーズと無色のトパーズは簡単に入手でき、しかも価格も非常に手頃です。今日、市場に出回っているブルートパーズのほとんどは、次の章で説明するように色処理されています。赤とピンクのトパーズは稀少なため珍重されており、カラットあたりの金額も非常に高額になります。インペリアルトパーズも珍重されています。

0.29カラットのルビーと0.75カラットのダイヤモンドでアクセントのついた11.11ctのインペリアルトパーズの指輪。ローズゴールドにセットされている。

ロイヤルな魅力:0.29カラットのルビーと0.75カラットのダイヤモンドでアクセントのついた11.11ctのインペリアルトパーズの指輪。ローズゴールドにセットされている。提供:Omi Privé

クラリティ:ファセットカットされたブルートパーズには、ほとんどの場合、肉眼で見えるインクルージョンがありません。多くはありませんが、カラートパーズの中にはインクルージョンがあるものがあります。色の稀少性によりますが、インクルージョンは価値に重要な影響を与えません。カット:トパーズは、エメラルド、クッション、オーバル、ペア、ラウンド、トライアングル、マーキスそしてファンタジーカットなど多種多様なシェイプとスタイルでカットされます。カラット重量:トパーズの色が稀少なものの場合、サイズが大きくなるにつれてカラット当たりの価格は劇的に上昇します。

1,002 ct のファンタジーカットトパーズ

この1,002 ct のファンタジーカットトパーズは芸術品である。写真撮影: Orasa Weldon/GIA

11月の誕生石:トパーズの処理、お手入れとクリーニング

11月の誕生石のクリーニングには、スチームクリーナーや超音波洗浄器を使用しないでください。トパーズのクリーニングには、温かい石鹸水が最適です。トパーズは処理されることがよくあります。天然の青色をしたトパーズは非常に稀なため、無色のトパーズに照射処理や、時にはその後に熱処理を施して様々な青色の色合いを生み出しています。照射技術には3種類あり、コバルト照射器でのガンマ線の照射、加速器を使った電子線の照射、および原子炉における中性子線の照射が使われています。加速器あるいは原子炉で処理された宝石は放射性を持つ可能性があります。そのため米国原子力規制委員会(NRC)は、そのような宝石の放射能レベルが一定以下になるまで、市場に出すことを許可していません。NRCでは「こういった宝石から発生する放射線量はごく微量」で減少し続けていくと報告しています。ディーラーたちは、濃い色合いのブルーを「ロンドンブルー」、「スイスブルー」、「スーパーブルー」、「マキシブルー」、薄い色相のブルーを「スカイブルー」などと呼んでいます。一般的には、濃い色相のブルーは薄いものよりも若干高めの値段になりますが、通常どちらも手頃な価格で手に入ります。

色を生み出すために照射処理されたブルートパーズは、「ミスティックトパーズ」または「カリビアントパーズ」と呼ばれる。

このブルートパーズは、業界で「ミスティックトパーズ」や「カリビアントパーズ」と呼ばれるようなこの色を生み出すために照射処理されている。写真: Valerie Power/GIA

また、黄色〜赤褐色のトパーズに熱処理を施してピンク色を作り出すのも一般的です。照射と熱処理は、通常の着用やお手入れに対しても効果が安定しています。ほとんどの場合、これらの処理は検出不能です。高温や急激な温度変化によりトパーズの内部に破損が発生する恐れがあります。トパーズの色は、一般的に光に対して安定していますが、熱や日光に長時間曝されるとイエローからブラウン、赤褐色、または濃褐色のものは色あせる恐れがあります。トパーズは一部の化学薬品によりわずかに影響を受ける場合があります。照射と熱処理に加えて、色を変えたり、幻想的な虹彩効果を出すために、無色のトパーズを薄い金属製のフィルムでコーティングすることがあります。コーティングは、日常的な磨耗には抵抗力がありますが、研磨剤や研磨用のバフなどによって除去されてしまいます。コーティング処理されたトパーズのクリーニングに使用できるのは、低刺激の石鹸水のみです。

11月の誕生石:シトリンの宝石学的特性

シトリンは、透明かつ淡黄色から帯褐橙色のクォーツの変種です。最高級のシトリンの色は、褐色みの無い、彩度の高い黄色から赤みがかったオレンジ色です。シトリンの色は微量の鉄の存在によるものです。しかし、天然のシトリンは稀少であり、市場にあるシトリンのほとんどはアメシストに熱処理が施されたものです。シトリンは、その魅力的な色に、他のほとんどのクォーツにも共通する耐久性と手頃な価格も加わり、最もよく売れる黄色〜オレンジ色の宝石となっています。ジェモロジストたちはこの11月の誕生石が大好きです。価格も手頃で、サイズが大きくなってもカラット当たりの価格が劇的に上がることがないからです。

64個のグラデーションのベゼルセッティングにセットされたクッションカットシトリンを特徴とし、177.11 ctのペアシェイプのシトリンドロップがハイライトとなっている、Jolie Citrine Necklace(ジョリーシトリンネックレス)。

Jolie Citrine Necklace(ジョリーシトリンネックレス)はかつてアメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーが所有していたが、現在は、Smithsonian Institution National Gem Collection(スミソニアン学術協会国立宝石コレクション )が所有。64個のグラデーションのベゼルセッティングにセットされたクッションカットシトリンを特徴とし、177.11 ctのペアシェイプのシトリンドロップがハイライトとなっている。提供: RP Studio(RPスタジオ)

11月の誕生石:シトリンの歴史と伝承

11月の誕生石であるシトリンはクォーツの変種で、何千年もの間宝石に使われてきています。古代ギリシャ人は、永久凍土のように輝くロッククリスタルの装飾品を彫刻していました。ローマ教皇は巨大な紫色のアメシストやシトリンの載ったリングを指に嵌めていたと伝えられています。ビクトリア朝時代のカラフルなスコティッシュジュエリーに使われたものが特に人気を集めました。シトリンはフランス語でレモンを意味する言葉、(citron)を語源とすると考えられており、結婚13周年記念(日本では結婚5周年記念とされる)に贈られる宝石です。

43.49 ctファンタジーカットのシトリン

ファンタジーカットがこの43.49 ctのシトリンの中に炎を解き放っている。写真: Priscilla Dyer. 提供: John Dyer & Co.

11月の誕生石: シトリンの産地

天然のシトリンの主要な産出地は、ボリビア、スペイン、マダガスカル、メキシコ、ウルグアイです。シトリンの色を生み出すために熱処理が施されるアメシストのほとんどは、ブラジルで採鉱されたものです。

シトリンとダイヤモンドを使った蝶のイヤリング

シトリンとダイヤモンドを使った蝶のイヤリングは、ボリビアのアナイ鉱山周辺の美しい光景を思い起こさせる。写真: C. D. Mengason/GIA. 寄贈:Denoir

世界最大の淡水湿地の奥深くにボリビアのアナイ鉱山があります。この鉱山は天然かつ熱処理をされていないシトリンの重要な産地です。野生の花畑、明るく羽ばたく鳥、蝶の万華鏡、ホエザルやジャガーなどがこの広大な舞台の役者です。この鉱山のストーリーはその環境にふさわしいものです。1600年代にスペインのある征服者により発見され、彼がアナイ(パラグアイのアヨレオ族出身の姫)と結婚した時に花嫁の持参金として与えられた土地でした。この鉱山は、1960年代に再発見されるまで、3世紀もの間忘れ去られていました。

ボリビアのアナイ鉱山は、11月の誕生石、シトリンの重要な産出地。

2つの山の間にボリビアのアナイ鉱山がある。写真:Robert Weldon/GIA

アナイ鉱山では、アメシストとシトリンが同じ結晶中に組み合わさった独特の石が産出されます。カットされた宝石で2つの色を呈しているものはアメトリンと呼ばれています。アナイ鉱山で産出されるシトリンは通常、オレンジイエローから茶色または緑がかったイエローとなっています。

シトリン、アメシスト、アメトリンなどの宝石がボリビアのアナイ鉱山で採鉱される。

アナイ鉱山から産出されるシトリン、アメシスト、アメトリンには幅広い色相がある。写真:GIA & Tino Hammid

11月の誕生石:シトリンの購入時に注目すべき品質

  • 色:最高級のシトリンの色は、飽和していて褐色みがほとんどあるいはまったく無く、黄色からオレンジイエローそして、赤みがかったオレンジ色があります。暖かく明るい色相を探しましょう。
  • クラリティ:シトリンは通常「アイクリーン」、つまり目に見えるインクルージョンがありません。淡い色の宝石に目に見えるインクルージョンがある場合、シトリンの価値は大幅に下がってしまいます。
  • カット:シトリンは様々な標準的な形やカッティングスタイルで入手することができます。加えて、多くのハイエンドの宝石彫刻家が、この暖かいイエローの宝石をジュエリーやobjets d’art(美術品)のために珍しいファンタジーカットに加工しています。微小なインクルージョンのあるシトリン原石は、多くの場合ビーズに加工されますが、カボションや彫刻に使用されることもあります。
  • カラット重量:シトリンの結晶には幅広いサイズがあり、20カラットもあるファセットカットされた石が、宝飾品として容易に入手できます。
18Kゴールドにセットされたシトリンとダイヤモンドのリング。

このリングで残り火のように輝いているシトリン。提供: Arya Esha

11月の誕生石:シトリンの処理、お手入れとクリーニング

シトリンは温かい石鹸水で安全に洗浄することができます。シトリンは超音波洗浄器でのお手入れは通常は問題ありませんが、シトリンを熱にさらしてはいけませんので、蒸気洗浄はお勧めできません。先に述べたように、市場のシトリンのほとんどは、魅力的でない淡紫色のアメシストに熱処理を施し、魅力的な黄色に変化させたものです。アメシストの色相がシトリンの黄色の色の豊かさを左右するため、濃い目の色の石を材料として使用することがあります。

0.30カラットのダイヤモンドに囲まれた、15 ctのシトリンペンダント。

Spring Bouquet(春の花束)。Rio Tinto(リオ・ティント社)の“Diamonds with a Story”(ストーリーのあるダイヤモンド)広告キャンペーンに使われた、0.30カラットのダイヤモンドに囲まれた15 ctのシトリンで輝くペンダント。提供: Matthew Campbell Laurenza

トパーズがお好きですか?シトリンに憧れますか?そんなあなたには、トパーズの購入ガイドシトリンの購入ガイドが大変役立ちます。